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公益法人会計基準(平成20年基準、新々会計基準)における正味財産増減計算書の解説

正味財産増減計算書の構成

  公益目的事業会計
(実施事業等会計)
収益事業等会計
(その他会計)
  法人会計   内部取引消去     合計    
一般正味財産増減の部
  1. 収益事業等会計またはその他会計を実施していない場合は、会計区分不要
  2. 公益目的事業会計(または実施事業等会計)および収益事業等会計(またはその他会計)はさらに事業ごとに細分化される。
  3. 会計上は細分化された事業ごとに区分するが、公益移行認定・認可申請時または定期報告時には、複数の事業をまとめてもよい
  経常増減の部
    経常収益
    経常費用
      事業費
      管理費
    評価損益等調整前当期経常増減額 ←収支相償はこの「評価損益等調整前当期経常増減額」の段階で判定
    評価損益等
    当期経常増減額
  経常外増減の部
    経常外収益
    経常外費用
  当期経常外増減額
  当期一般正味財産増減額
  一般正味財産期首残高
  一般正味財産期末残高
指定正味財産増減の部
  当期指定正味財産増減額 一般正味財産への振替額
  指定正味財産期首残高
  指定正味財産期末残高
基金増減の部
  基金受入額
  基金返還額
  当期基金増減額
  基金期首残高
  基金期末残高
正味財産期末残高

(1)「一般正味財産増減の部」と「指定正味財産増減の部」に区分⇒受託責任の明確化
指定正味財産
  1. 寄付によって受け入れた資産
  2. 寄付者等の意思が明確であること
  3. 寄付者等の意思により当該資産の使途、処分または保有形態について制約が課されていること

⇒いわゆる資本取引に近い

一般正味財産
  1. 寄付によって受け入れた資産で、寄付者によってその使途が指定されていないもの
  2. 社団、財団の事業活動の過程で取得した資産

⇒財団の事業の効率性を判断される。

基金
  1. 基金とは、一般社団法人に対して拠出された「金銭その他の財産」
  2. 一般社団法人は、合意の定めに従い「返還義務」を負う
  3. 基金を募集する場合には一定事項を定款に定める必要がある。
  4. 基金の返還をする場合は定時社員総会の決議が必要
  5. 基金利息は禁止
  6. 基金を返還する場合は、返還基金相当額を一般正味財産から「代替基金」として振り替える必要がある。⇒BSの一般正味財産の部の内訳表示
(2)「指定正味財産の部」から「一般正味財産の部」への振替

指定正味財産に対応する資産(基本財産、特定資産)が、寄付者の目的が達成され、指定の解除がなされたときは、当該資産の減少額に対応する指定正味財産を一般正味財産へ振り替える。

指定の解除とは・・・
  1. 制約の解除(受取利息や配当金の受取り)
  2. 減価償却
  3. 物理的な消滅

一般正味財産増減の部

(1)経常増減の部
@経常収益
中科目 小科目 説明 帰属会計区分
公益法人 一般法人
基本財産運用益 基本財産受取利息
  1. 一般正味財産から充当された満期保有目的債券の利息
  2. 一般正味財産から充当された満期保有目的債券の償還差額の償却額
  3. 指定正味財産から充当された満期保有目的債券の利息(指定正味財産からの振替え)
指定正味財産から充当された満期保有目的債券の利息または償還差額の償却額は一旦指定正味財産の部に計上して、利息部分のみ一般正味財産への振り替えをする。
元金のBS区分に対応 元金のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
基本財産受取配当金
  1. 一般正味財産から充当された株式・出資金からの配当
  2. 指定正味財産から充当された株式・出資金からの配当(指定正味財産からの振替え)
指定正味財産から充当された株式の配当金は、一旦指定正味財産の部に計上して、一般正味財産への振り替える。
元金のBS区分に対応 元金のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
基本財産受取賃貸料 指定正味財産から充当された不動産の賃貸料は、一旦指定正味財産の部に計上して、一般正味財産への振り替えるが、一般正味財産から充当された不動産の賃貸料はそのまま経常収益に計上する。 収益不動産の帰属会計 不動産のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
特定資産運用益 特定資産受取利息
  1. 一般正味財産から充当された満期保有目的債券の利息
  2. 一般正味財産から充当された満期保有目的債券の償還差額の償却額
  3. 指定正味財産から充当された満期保有目的債券の利息(指定正味財産からの振替え)
指定正味財産から充当された満期保有目的債券の利息または償還差額の償却額は一旦指定正味財産の部に計上して、利息部分のみ一般正味財産への振り替えをする。
元金のBS区分に対応 元金のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
特定資産受取配当金
  1. 一般正味財産から充当された株式・出資金からの配当
  2. 指定正味財産から充当された株式・出資金からの配当(指定正味財産からの振替え)
指定正味財産から充当された株式の配当金は、一旦指定正味財産の部に計上して、一般正味財産への振り替える。
元金のBS区分に対応 元金のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
特定資産受取賃貸料 指定正味財産から充当された不動産の賃貸料は、一旦指定正味財産の部に計上して、一般正味財産への振り替えるが、一般正味財産から充当された不動産の賃貸料はそのまま経常収益に計上する。 収益不動産の帰属会計 不動産のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
受取入会金・受取会費 正会員入会金・会費 社団法人で定款で定めるところにより社員が支払う会費であり、定款に規定

(*財団法人の会費は寄附金扱い)
指定された個別事業区分または共通区分 指定された個別事業区分または共通区分
使途の指定がない場合は
50%が公益目的事業会計共通区分
のこり50%は法人会計
使途無指定の場合は100%法人会計
賛助会員会費 社団法人の社員以外の構成員が支払う会費は寄附金あつかい 指定された個別事業区分または共通区分 指定された個別事業区分または共通区分
使途無指定の場合は100%公益目的事業会計の共通区分 使途無指定の場合は100%法人会計
事業収益
  1. 地方公共団体との委託契約
  2. 指定管理者に基づく委託費等
当該事業帰属会計
*委託費の内訳に法人の管理運営経費があれば、合理的な案分基準で法人会計に案分可能
当該事業帰属会計
*委託費の内訳に法人の管理運営経費があれば、合理的な案分基準で法人会計に案分可能
受取補助金 ・国庫補助金
・地方公共団体補助金
・民間補助金
(原則)
いったん指定正味財産の部に受け入れ、使用した額だけ一般正味財産に振り替える。
(例外)
その事業年度末までに目的たる支出を行うことが予定されている補助金等を受け入れた場合は、指定正味財産増減の部を通さずに、一般正味財産増減の部に記載することができる。
補助金交付要綱
(法人会計帰属もありうる)
補助金交付要綱
(法人会計帰属もありうる)
受取助成金 同上 助成金交付要綱
(法人会計帰属もありうる)
助成金交付要綱
(法人会計帰属もありうる)
受取負担金 受取負担金 受益者の負担金 当該事業帰属会計 当該事業帰属会計
受取負担金振替額 指定正味財産から一般正味財産への振替額 当該事業帰属会計 当該事業帰属会計
受取寄附金 受取寄附金 【使途指定寄付金】
(原則)
いったん指定正味財産の部に受け入れ、使用した額だけ一般正味財産に振り替える。
(例外)
その事業年度末までに目的たる支出を行うことが予定されている寄附金を受け入れた場合は、指定正味財産増減の部を通さずに、一般正味財産増減の部に記載することができる。
指定された事業区分 指定された事業区分
【使途無指定寄附金】
一般正味財産の部
100%公益目的事業会計の共通区分 100%法人会計
雑収益 受取利息 流動資産またはその他の固定資産に計上された預金利息 元金のBS区分に対応 元金のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
有価証券運用益 売買目的保有有価証券に係る評価益および売却益 元金のBS区分に対応 元金のBS区分に対応
使途無指定の場合は法人会計
雑収益 小規模事業、付随事業他 当該事業帰属会計 当該事業帰属会計
A経常費用
  平成16年度基準(指導監督基準) 平成20年度基準
事業費 公益事業費は総支出額(支出合計額+次期繰越収支差額)の2分の1以上 公益目的事業費比率は50%超(公益社団財団法人のみ、一般法人は制約なし)
目的別分類が主流 形態別分類が原則
経費科目 内容 注意事項
減価償却費 一般正味財産から充当した固定資産の減価償却
指定正味財産から充当した固定資産の減価償却 同額を指定正味財産の部から一般正味財産の部に振替る。
(上記、経常収益の科目説明の受取寄附金振替額等)
管理費 管理費は総支出額の2分の1以下
目的別分類が主流 形態別分類が原則
理事・評議員・監事の報酬、総務経理人件費、理事会・総会開催費等
理事報酬 従事割合等により事業費に按分可
監事報酬 原則管理費
管理部門人件費 従事割合等により事業費に按分可
総会の会場費・交通費・通信費。印刷代 原則管理費
上部団体への上納金 原則管理費
法人登記関係の諸費用(租税公課、報酬) 原則管理費
税理士報酬等 原則管理費
支払利息 原則管理費
有価証券評価損益:一般正味財産から充当した売買目的の有価証券を時価評価した場合の評価損益 評価損益等の区分へ
基本財産評価損益:市場価格のある「その他有価証券」を基本財産として一般正味財産から充当した場合は、時価評価することになるが、その場合の時価評価損益  評価損益等の区分へ
投資有価証券評価損益:一般正味財産から充当した市場価格のある「その他有価証券」を時価評価した場合の評価損益  評価損益等の区分へ
共通経費
従事割合グループ 使用割合グループ 面積割合グループ 売上基準グループ
役員報酬 従事割合 旅費交通費 使用割合 建物減価償却費 面積割合 租税公課(消費税) 課税標準額
給与手当 従事割合 通信運搬費 使用割合 修繕費 面積割合
使用割合
租税公課(法人税等) 課税所得額
臨時雇賃金 従事割合 備品減価償却費 使用割合 光熱水費 面積割合
使用割合
退職給付費用 従事割合 消耗品費 職員数比
使用割合
地代家賃 面積割合
法定福利費 職員数比
従事割合
印刷製本費 使用割合 建物保険料 面積割合
福利厚生費 職員数比
従事割合
燃料費 使用割合 固定資産税 面積割合
会議費 職員数比 賃借料 使用割合 支払利息
(不動産対応、奨学基金)
面積割合
使用割合
自動車保険料 使用割合
自動車税
諸謝金 使用割合
B評価損益等
有価証券評価損益 一般正味財産から充当した売買目的の有価証券を時価評価した場合の評価損益および売却損益
基本財産評価損益 市場価格のある「その他有価証券」を基本財産として一般正味財産から充当した場合は、時価評価することになるが、その場合の時価評価損益および売却損益
*指定正味財産から充当した基本財産(投資有価証券)の売却損益であっても、一般正味財産増減の部に計上
投資有価証券評価損益 一般正味財産から充当した市場価格のある「その他有価証券」を時価評価した場合の評価損益および売却損益
*指定正味財産から充当した基本財産(投資有価証券)の売却損益であっても、一般正味財産増減の部に計上

(2)経常外損益の部
経常外収益 過年度基本財産評価益 @基本財産として指定正味財産から充当した資産の過年度損益と同額を指定正味財産の部から一般正味財産の部へ振替る。
過年度投資有価証券評価益 A指定正味財産から充当した投資有価証券の過年度損益と同額を指定正味財産の部から一般正味財産の部へ振替る。
固定資産受贈益 B指定正味財産から充当した固定資産の過年度損益と同額を指定正味財産の部から一般正味財産の部へ振替る。
固定資産売却益 一般正味財産から充当した固定資産の売却益(売却収入ー売却資産原価)

(指定正味財産から充当した投資有価証券の売却益は一般正味財産増減の部に計上される)
受取寄附金振替額 C指定正味財産から充当した固定資産を除却した場合、除却資産簿価を指定正味財産の部から振り替える。
経常外費用 過年度基本財産評価損 @新会計基準移行年度の基本財産期首残高の修正額については、BSの期首残高を期首時価で表示するとともに、過年度損益は経常外損益として表示する
過年度投資有価証券評価損 A新会計基準移行年度の期首残高の修正額については、BSの期首残高を期首時価で表示するとともに、過年度損益は経常外損益として表示する
過年度減価償却費 B新会計基準移行年度の期首残高の修正額については、BSの期首残高を組み替えて表示するとともに、過年度損益は経常外費用として表示する
固定資産売却損 一般正味財産から充当した固定資産の売却損(売却収入ー売却資産原価)

(指定正味財産から充当した投資有価証券の売却損は一般正味財産増減の部に計上される)
固定資産除却損 一般正味財産から充当した固定資産の除却損(除却資産簿価)
C指定正味財産から充当した固定資産の除却損(除却資産簿価)

他会計振替額

公益財団社団法人 一般財団社団法人
繰入制限 収益事業からの利益(法人会計の費用控除後)の50%以上 なし
共益事業からの利益(法人会計の費用控除後)の50%以上 なし
会計区分 公益目的事業会計 収益事業等会計
事業区分 公1 公2 共通 収1 共1
他会計振替額     100 ▲50 ▲50
※法人会計の費用は事業費の割合に応じて収益事業等会計の利益から按分控除する。

指定正味財産増減の部

  平成16年度基準(指導監督基準)、平成20年度基準 公益法人 一般法人
受取補助金等 使途と指定されて受け入れた補助金 指定事業会計 指定事業会計
受取負担金 使途と指定されて受け入れた負担金 指定事業会計 指定事業会計
受取寄附金 使途と指定されて受け入れた寄附金 指定事業会計 指定事業会計
固定資産受贈益 寄付者により使途が指定された受け入れ固定資産時価
現物寄附による受入資産の時価と対価との差額
指定事業会計 指定事業会計
基本財産評価損益 ・市場価格のある「その他有価証券」を基本財産として指定正味財産から充当した場合は、時価評価することになるが、その場合の時価評価損益(償却原価法の償却損益を含む)
指定事業会計 指定事業会計
特定資産評価損益 ・市場価格のある「その他有価証券」を特定資産として指定正味財産から充当した場合は、時価評価することになるが、その場合の時価評価損益
指定事業会計 指定事業会計
投資有価証券評価損益 指定正味財産から充当した市場価格のある「その他有価証券」を時価評価した場合の評価損益 指定事業会計 指定事業会計
基本財産受取利息
市場価格のある「その他有価証券」を基本財産として指定正味財産から充当した場合の受取利息であるが、同額を「一般正味財産への振替額」で減額する。
「満期保有目的債券」を基本財産として指定正味財産から充当した場合は償却原価法を適用するが、その場合の償却差額(一般正味財産へは振り替えない)
指定事業会計 指定事業会計
特定資産受取利息
市場価格のある「その他有価証券」を特定資産として指定正味財産から充当した場合の受取利息であるが、同額を「一般正味財産への振替額」で減額する
「満期保有目的債券」を特定資産として指定正味財産から充当した場合は償却原価法を適用するが、その場合の償却差額(一般正味財産へは振り替えない)
指定事業会計 指定事業会計
  • 一般正味財産への振替額
基本財産としての有価証券の受取利息・配当金
特定資産としての有価証券の受取利息・配当金
使途の指定された固定資産の減価償却額
新会計基準移行に伴うか年度損益修正損益
使途の指定された固定資産の滅失・除却
使途の指定された補助金等(寄附金含む)の費消額 注記「補助金等の内訳並びに交付者、当期の増減額及び残高」の「当期減少額」